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領域開拓の試金石となる ビル一棟リノベーション

PROJECT 03 領域開拓の試金石となる ビル一棟リノベーション I/O shimbashi ビル一棟リノベーション

どうしても逃したくない、新領域への挑戦のチャンス。

リノベーションはよく耳にするが、雑居ビルを一棟フルリノベーションする事例は世の中にあまりないのが実情だ。

一棟リノベーションは新築に比べて難易度が非常に高く、建築から設備を含めてすべて対応できる会社も非常に少ない。また、技術力のあるゼネコンも、普段作っているものと規模がかけ離れるためにコストが合わず、手がけることはほとんどない。

では、新しく建替えたほうが良いのでは?と思うが、フルリノベーションは建替えの1/2以下のコストで済む。コストメリットが大きく、老朽化が進む雑居ビルの多い都心ではニーズが高まってくるだろう。

今回紹介するI/O shimbashi(旧鈴木ビルディング)は築56年(2020年時点)の6階建のオフィスビル。お客さまは東急不動産株式会社。

取引のある設計事務所からリノベーションの施工コンペに参加してほしいと依頼が来た。「このプロジェクト、やらせてください」と上長や役員に懇願したのは施工管理の水谷龍一。担当役員は「やめたほうがいい」と言った。

水谷の上司は「これが成功できたらGOOD PLACEの新領域として事業拡大できるが、リスクも伴う。今後やれるかやれないかは今回のプロジェクトの成否次第」と言ってくれた。

役員が否定的だったのは、過去にフルリノベーション事業が上手くいかなかった経験があったからだ。当時は技術も経験も未熟で採算が合わなかったため、水谷が入社する直前に事業撤退していた。

水谷自身はリノベーションがやりたくてGOOD PLACEへ入社したが、事業はなくなっていた。だからこそ彼にとってはどうしても逃したくない入社から8年越しのチャンスだった。

やりたいことができる嬉しさとプレッシャー。

水谷には、「今のGOOD PLACEなら、自分ならやれる。いや、やり抜きたい」という想いがあった。
「入社から数年経って、社内にも自分にも建築施工ノウハウがかなり蓄積されていました。ビル一棟に近い難度の実績もあったので、できるんじゃないかと思ったんです。上長と役員には無理やりお願いした感じですね笑」

役員は彼の自信と想いを汲み、ゴーサインを出した。

ビルは新橋駅から徒歩1分。周りには大小様々なビルが所狭しと並ぶ。隣のビルとは30cmしか離れていない。しかも残っている図面は約60年前の手書きのもの。この図から構造や設備などを読み取り、実際に物件を調査する。管轄する自治体の法的な確認も行い、それらの情報とリノベーション後の設計図とを見比べながら、施工図を引き、コストを算出し、工事手順を検討していった。

コンペで無事に契約を勝ち取り、工事が始まった。しかし、フタを開けるとフルリノベーションならではの問題が次々と出てきたのだった。

「やりたいことができる嬉しさが強かったのですけど、やっぱりプレッシャーでした。自分自身では精神的にタフだと思っていたんですが、始まってから眠れない日が続きました」

やりながら課題解決していくフルリノベーションの難しさ。

今回の工事は、まず現状の建物の内外装を解体し、壁と骨組みだけにしていき、そのあと新しい内外装を作り上げていく流れ。建物正面の窓サッシも現状のものから新しいものに変えるプランだったが、内外装の解体後に問題が発生した。

建物正面側の柱の位置が各階で微妙にズレていたため、すべての階で建物正面の窓サッシの枠サイズが異なっていたのだ。例えば、一見同じサイズのものに見える2階と3階の窓も、実はわずか数cmだけサイズが違った。

意匠的にはビル正面を眺めたときに全ての階を通して窓サッシのラインを美しく揃えたい。普通、建物を新築で建てる場合は、同じ窓は当然同じサイズで発注すればよいが、今回は階ごとに枠サイズを計測、計算し、すべて別サイズの窓サッシを発注する必要があった。計測、計算にミスがあれば、窓サッシのラインはガタガタになってしまう。しかし、足場が外れるまでは設置した窓サッシのラインを外から目で見て確認することができない。

水谷は当時の心境を振り返る。「ラインが揃っているか心配で眠れませんでした。やり直しになったらお金も納期も間に合わない。怖かった工事の一つです」

フルリノベーションならではのこうした問題が窓サッシ以外にも起こり、その都度工程表は書き直された。工程表の数は通常工事の5倍を超えた。「実際にやりながら計画していかないといけないフルリノベの難しさはすごく勉強になりました。大変だったけれど、楽しかったです」と彼は笑った。

GOOD PLACEの新領域を切り拓く。

正面の足場が取り払われたとき、フロアをつなぐような美しい窓サッシのラインが現れた。

2020年9月、無事竣工を迎え、お客様からは感謝の言葉をもらうことができた。
「業界大手の東急不動産でも一棟のフルリノベは初めてだったそうです。今回設計を担当された設計事務所や協力してくれた施工会社も数々のリノベで実績を積まれていましたが、彼らにも初めての課題がすごく多かったようです。ある意味そうした新しい課題に毎週のように立ち向かえたすごいプロジェクトだったんだなって思いましたね」と水谷は言った。

竣工間もなくテナントが決まり、東急不動産からは「次もまたお声がけします」と言ってもらえた。またビルは一棟フルリノベーションの事例として、お客さまが見に来られる見本となった。GOOD PLACEの利益目標も見事達成した。

水谷は言う。「本当に挑戦してよかったです。フルリノベの工程やコスト、品質などのポイントが分かり、新たな経験値になりましたし、これから施工管理を学ぶ人たちにとってもすごく良い場所になると思います。課題が多くその度に現場で解決方法を考えられる。施工管理として鍛えられるし、知見になる。よく新築よりリノベのほうが難しいと言いますが、本当にそのとおりで収穫の多い仕事でした」

このプロジェクトで、水谷はGOOD PLACEの新領域を切り拓いた。当初「やめたほうがいい」と言っていた役員は「よくやった!」と褒めたたえてくれた。

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